銀座カラー名作に学ぼう 今週の、あのセリフ

スティーブンが、誰かを本気で愛することの意味を教えてくれる!

 

「彼といると自分が無敵に思えた」
(映画『フィリップ、君を愛してる!』より)

 

一度死んだも同然。だったら愛したい人を愛したい。

 

主人公のスティーブン(ジム・キャリー)は、生い立ちがやや複雑な男。幼少時、両親(とその兄弟)から突然「実はあなたは養子なの」と告げられてしまったのです。その時のショックと育ての親への複雑な思い、実の親への恋しい気持ちと失望感を拭いきれないまま大人になってしまいました。

 

成長した彼はバージニアビーチの警官になったのですが、実はこれ、警察の情報網を利用して実母の居場所をつきとめるために就いた職業だったのです。見事、実の母を見つけて家を訪ねますが、想像以上に冷たく拒否をされてしまい、傷はさらに深まることに……。

 

その日のうちにスティーブンは警官を辞め、妻と娘を連れてテキサスへと移住。食品会社に再就職した彼とその家族は、平凡だけど平和な日々を送ります。ところがある夜、スティーブンは自動車事故にあい、生死をさまようハメに。そこで彼は初めてあることを決意するのです。「これからは、自分に正直に生きよう」と。

 

実はスティーブンは、同性愛者だったのです。一度命を失いかけたことで、本当に愛したい人を愛し、悔いのない人生を送りたいと心から願ったのでした。

 

さっそくその決意を実行に移すスティーブン。ところが彼はすぐにこんなことにも気づくのです。

 

「自分らしく生きる=愛する”男”を自分のものにするには……大金がかかる!」

 

金品の魅力で男性の気を引こうと、彼はなんと保険金詐欺師になり、大金を荒稼ぎしてはすべてをボーイフレンドに貢ぐようになります。当然ながらあっけなく御用となり、刑務所行きに……。

 

与えなくても”与えられるもの”があるのに、不幸体質はそれが見えてない?

 

そしてここからが運のツキ……いや不運のはじまりか、刑務所で”運命の人”フィリップ(ユアン・マクレガー)に出会います。スティーブンは凝りもせず賄賂などの不正をしてまで、フィリップを喜ばせようとします。たとえば、刑務所内の祖末な食事を、二人分だけ豪華な肉料理にしてもらったり。

 

先に出所したスティーブン、今度は弁護士になりすまし、天性の騙しテクで、裁判にかけられたフィリップを勝利へと導きます。自由な世界でふたりの蜜月期が始まるはず、だったのですが……。

 

フィリップを愛するあまりに、彼を喜ばせたいばかりに、嘘を重ねて人を騙してはお金を工面し、彼にあらゆる贅沢を与えようとするスティーブン。フィリップは「贅沢な生活でなくてもいい。ただあなたと一緒にいたい」と言っているにもかかわらず、愛をお金で買おうとするクセは治りません。

 

なぜスティーブンは危険を冒してまでフィリップを愛するのでしょうか。それは「彼といると自分が無敵に思える」から。誰かを好きになったことがある人ならば、こんな無敵感や全能感を一度は感じたことがあると思います。向かうところ敵なし。いや、敵がいても小指の先でねじ伏せることができそうなくらいに、アドレナリンが大放出。恋愛ってまるで魔法にかけられたとしか思えないほどの、妙な力がみなぎってきますよね。そんな自分に酔ってしまい、新たな恍惚感を得たくて、さらに危険を冒してしまうのです。ああ、『不幸な恋愛の教科書』というものがあったら、必ず書いてあるであろう筋書き。

 

この作品、同性愛者が主人公となっていますが、そのまま女性がダメ男にハマって貢いでいくパターンと同じなので、けっこう身につまされる人も多いかも(映画のフィリップは、ダメ男どころか誠実で純粋な好青年なのですが)。

 

誰かの心を自分だけのものにしたくて、相手が望んでいようがいまいがお構いなしに「与え続けて」しまう……。相手の喜ぶ顔を見て、「自分は愛されているのだ」と安心したいがために。

 

誰もが思いきり想像できてしまうのですが、こんな愛は破滅に一直線。映画のラストには切なさが散りばめられていて、スティーブンを「バカな男」と一笑できなくなってしまいます。

 

この映画、なんと実話がベースとなっているというから驚愕。愛のために受けた懲役、なんと167年!

 

「愛されていること」を肌で実感するって、実はとても難しいことなのかもしれません。

 

 

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