
「君が世界で一番すばらしいということを見いだした自分自身が誇らしい」
(映画『恋愛小説家』より)
差し伸べられた手に気づこうとしない、孤独な小説家。
マンハッタンに暮らす恋愛小説家のメルヴィン(ジャック・ニコルソン)は、かなり自己中心な男性。隣人のゲイ・カップルが飼っている犬が気に入らないとダストシュートに投げ入れたり、行きつけのカフェではほかのお客やスタッフに悪態をついたり……。
また、超がつくほどの潔癖性&脅迫観念症でもあり、家の鍵をかける時や電気を消す際は「5回ずつ」かけたり消したりを繰り返さないと気が済みません。道を歩く時には、割れ目やタイルの上を歩けず、それらを避けて通るために、人にぶつかり、怒鳴りながら歩を進めるという変人でもあるのです。
要するに「街の鼻つまみ者」であるメルヴィンですが、唯一彼が心を開いているのが、行きつけのカフェのウエイトレス・キャロル(ヘレン・ハント)。
ところが、心を寄せているにもかかわらず、彼女にも相当な悪態をついてしまい、ある日彼女を心底傷つけて怒らせてしまいます。
その後、ひょんなことから隣人の犬を預かることになり、そのことをきっかけに潔癖性メルヴィンの心に徐々に変化が訪れはじめます。自分の性格を熟知しているけれども「治す気」はなく、生涯孤独な人生を受け入れていた彼でしたが、はからずも犬の健気さ・可愛さにどんどん心を奪われ、癒されていくのです。次第に、自分のわがままをぶっきらぼうながらに受けてくれていたキャロルへの、不思議な感情にも気づきはじめるのでした。
実はキャロルには喘息に苦しむ息子がいて、女手ひとつで苦労を重ねながら育てていました。昼夜関係なく救急病棟にかけこむ日々が続く彼女は、緊急事態に備えるために、とうとうカフェを辞める決心をします。
そこでメルヴィンは、彼女の息子が十分な治療を受けられるように、専属の医者を手配し、費用は自分持ちにして、彼女を助けることを決意。ところがそれまで何度もメルヴィンの失礼な言葉や態度で傷つけられていたキャロルは、その申し出を拒否します。
どうにかしてメルヴィンはキャロルの力になろうと、あの手この手を尽くすのですが、悲しいかな、すべてが裏目に……。口を開けば、彼女を激怒させることしかついて出てこないのですから当然。
人は「素直になろう」と思っても、時に恥ずかしさが先にたってしまい、心にないことを言って自分の気持ちをごまかしてしまうことがあります。また素直な気持ちを伝えることは「相手を優位にして自分は”負けた”気分になるから」とちっぽけなプライドが生まれることだって多々あります。メルヴィンがまさにそう。
これって、本当にどうでもいいプライドですよね。でも世の中にはこのちっぽけなプライドで、大事にすべき愛をみすみす手放す人たちが本当に多いような気がします。世の中の恋人たちの「別離」は、そもそもはこの”ちっぽけな意地の張り合い”がきっかけではないでしょうか。
好意を表現したら負け?安いプライドは捨ててしまおう!
みなさんもご存じのように、恋には”タイミング”という要素がとても重要で、メルヴィンのこの気づきも、少しのズレで「時すでに遅し」になることだってたくさんあります。
「この人が誰よりも大事」と感じた時が、相手に伝える唯一のタイミングなのです。もったいぶらずにすぐに伝えないと、大事な人はあなたから「世界一の人だと思われていること」なんて気づかないまま、遠くにいってしまうかもしれません。
特に恋愛においては「言葉にしないと伝わらないこと」って、けっこう多いもの。反対に言えば、今すぐ正直な気持ちを相手に伝えることで「運命」を変えることだって可能です。
なによりも、ちっぽけなプライドで大切なものを見失ったり「伝えなかった後悔」を抱えて生きるよりもずっと、「素直になれた」という軽やかな気分で未来を歩んでいけるはず!