銀座カラー名作に学ぼう 今週の、あのセリフ

理解ではなく、認めること。人に少しだけ優しくなれる映画

 

「僕の生き方を褒めてほしいとは言わない。でも、ジャッジしないでほしい」(映画『星の旅人たち』より)

 

自分の”道”を本当に歩いていますか?

 

カリフォルニアで眼科医をしているトム(マーティン・シーン)は、自分探しの旅に出たひとり息子・ダニエル(エミリオ・エステベス)が、ピレネー山脈で嵐に巻き込まれて亡くなったと知らされます。数年前まで大学院に通っていたダニエルは、父親の期待に沿うことをやめて、「世界を知らなくてはいけない」と放浪の旅に出たのです。以来疎遠になってしまった父子。

 

ダニエルはこの時、通称『カミーノ』と呼ばれる巡礼の旅に出ていました。このサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路は、キリスト教の聖地であるスペイン・ガルシア州の都市へと続く約800キロの道を”歩く”旅のことで、日本でいうと”お遍路”のようなもの。”フランス人の道””イギリス人の道””北の道””ポルトガルの道”などさまざまなルートがあるのですが、ダニエルは”フランス人の道”の入口であるピレネー山脈で、不運にも天候不良の嵐に見舞われ、カミーノ初日に命を落としたのでした。

 

息子の遺体を引き取りに、フランスのサン=ジャンにやって来たトム。そこで思い出したのは、旅に出る直前のダニエルと交わした親子の会話でした。

 

ダニエル「僕の生き方を褒めてほしいとは言わない。でも、ジャッジしないでほしい」

 

トムは、順風満帆だったダニエルがなぜ突然放浪をはじめたのか、ずっと理解できずにいました。大学院を出て親と同じ道を歩めば、社会的地位も名誉も手にする人生を約束されるはずたったのに……。その答えを知るために、トムはダニエルの遺品となったバックパックを背負って、彼が辿るはずだった巡礼の旅に出ることを決意します。

 

誰かにとっての”成功”は、自分にとっての”成功”ではないことも。

 

「最後に旅に出たのはいつ? 出張じゃなくて」。
トムはダニエルから言われた言葉の数々を、カミーノのあちこちで反芻します。旅に出て初めてトムは、仕事だけに情熱を傾けてきたことに気づくのです。しかし、すべては自分のため、家族のため、社会のためだと思ってやっていたこと。仕事で世界中を訪れましたが、はたしてそれは「世界を見ていたこと」になるのだろうか。ダニエルの言うように、自分はなにも見ないまま、考えないまま、ここまで年を重ねてきたかもしれない、と。

 

息子のかわりに旅に出たつもりが、いつしか内省の日々となるトム。旅のはじめに、世話になった警官に「息子のために旅に出ます」と告げた時、警官からこう言われたことをトムは思い出すのです。
「道は自分のためにあるのですよ」。

 

人はつい自分の希望や期待を他人に押し付けがちです。恋愛時は特にそう。「こうしてくれるもの」と相手に勝手に期待して、期待どおりにいかなかったら、つい相手を責めてしまいます。ダニエルの言葉は、責められた側のすべての人の気持ちを代弁しているような気がします。

 

人間関係を上手に築き上げるには、相手を認めることがなによりも大事。それがもしできない場合は、せめて相手のことをジャッジしない。これがもっとも大切なことであり、実行するにはなかなか難しいことでもあります。どんなに「よかれ」と思ってアドバイスをしたつもりでも、それが結果的にダメ出しになっていては、恋は近づくどころかどんどん自分から逃げていきます。このあたりのコントロールが難しいのですが、ついカッとなった時は、この映画を観て、またダニエルの言葉を思い出してみると、ちょっとだけクールダウンができるかもしれません。

 

映画に登場するカミーノの景色に癒やされ、カミーノを歩くさまざまな国の人たちの気質に笑い(特にオランダ人の前向きさ&のんきさは必見!)、観終わったころには登場人物と一緒に800キロを歩いた気分になれるはず。そして観賞後は、人に少しだけ優しくなれるような気がしますよ。

 

 

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