銀座カラー名作に学ぼう 今週の、あのセリフ

美しすぎるのは罪。絶世の美女だからこそ見えてくる相手のホンネ

 

「片思いこそ、真実の愛」(映画『マレーナ』より)

 

すべての男を虜に、すべての女を敵にした美女

 

舞台は第二次世界大戦下のイタリア・シチリア島。その海辺に住むマレーナ(モニカ・ベルッチ)は、町中の男性たちを虜にしている訳ありの人妻。主人公の12歳の少年レナート(ジュゼッペ・スルファーロ)も年上のマレーナに夢中で、寝ても覚めても彼女のことが頭から離れずにいます。

 

一方、マレーナは町中の女性の嫉妬の的でも……。彼女が町を歩くだけで「戦場に行っている夫の留守をいいことに、誰とでも寝ているらしい」「そういえば私の夫が誘惑されたわ」など、あらぬ噂を聞こえよがしに囁かれてしまいます。男たちと目が合えば「俺は彼女から好かれている!」と面倒な誤解を生み、女たちと目が合えば罵倒されるため、マレーナは誰とも目を合わせぬよう常に伏し目がちに歩くのでした。しかし、日陰を選んで生きているにも関わらず、その美しさは余計に際立ってしまうという皮肉。

 

マレーナの本質を知っていたのはたったひとりの少年

 

そんなマレーナに、不運が次々と襲ってきます。戦場に行った夫は帰らぬ人となり、父親は空爆で命を落としてしまったのです。心のよりどころを失った彼女は次第に「周囲が求めているマレーナ」を演じるようになります。つまり「ふしだらで淫らな女」として生きる決心をするのです。

 

恋心が募るあまりに、ほぼストーカー状態になっていたレナートは、そんな彼女の心のうちを密かに知る唯一の人物となります。しかし、彼はまだ子ども。マレーナを救う術を持ちません。彼女が町中の女たちに、激しいリンチにあった時でさえも……。

 

「片思いこそ、真実の愛」。これはレナートがマレーナ宛に手紙を書いては捨て、書いては捨て……を繰り返している時の一文。結局彼の手紙はもちろん、想いさえもマレーナに届くことはなかったし、マレーナはレナートの存在に気づくことさえなかったのですが……。

 

リンチ事件後、姿を消したマレーナは、ある日突如町に戻ってきます。はちきれんばかりの色香に溢れていた彼女の輝きはすっかり消え失せていましたが、これまでにない穏やかな表情を浮かべて。
レナートはこの時、初めてマレーナに声をかけます。「マレーナさん、お幸せに」と。実は「片思いこそ、真実の愛」が証明されるような不思議な運が、終盤にむかって動き始めていたのです。彼の一方的な愛が結果的にマレーナを救ったことは、彼女も町の人々も、またレナート自身も気づかぬまま。この顛末は映画をご覧になった人だけのお楽しみなので、ここでは内緒に。

 

見返りを期待せず、相手の幸せだけを願える?

 

誰が狡猾で、誰が信用に値する人間なのか、レナートにはわかるのです。大人たちの猥雑で無責任な行動に振り回されることなく、まっすぐにマレーナを見つめ、彼女の幸せを本気で願っていたのは彼だけだから。

 

この映画、なにはともあれ、主演のモニカ・ベルッチの生命力溢れる色香も必見! ボッティチェッリが描く女神のような美しさには、ひたすら息をのむしかありません。

 

「美しすぎるのは異形と同義。美しさは罪」。女たるもの一度は経験してみたいような、でもしたくないような……。自分がもしマレーナだったらどのような人生を送るのか、そんな妄想も楽しめる作品です。

 

 

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